W | 計算の手間の評価と計算技術の習得 | |||
(1) | 計算力の重要さを知れ | ![]() |
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計算力は、 思考力やセンスと同様に大切であり、 それらは互いに関連した力である。 というのは、 計算がしっかりできる人は、 計算をしながら、 先を洞察していくことができ、 その結果推理する力も生じてくるからだ。 計算の達人とは、 正確で速い計算力を有するコンピュータみたいな人か、 または、必要最小限の計算だけで 計算を済ませることができる人のことである。 当然、後者を目指せ。 そして「計算の手間を考えてから 解法を決定する」 ということを勉強しなければならない。 |
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(2) | 計算間違いをしないためには | |||
計算間違いが多い個所には、次のものがある。 [1] 四則演算 [2]分数式における通分 [3]無理数、指数、対数の計算 [4]3角関数の計算 [5]微分 [6]積分 [7]行列の演算 これ以外に、各人の心構えの範疇(ハンチュウ)に属するものに、 [8]かっこを外す際の符号ミス [9]絶対値を外す際のミス [10]添え字ミス [11]書き間違え [12]写し間違え 上のどれかをしている最中に、ミスを犯すのである。 そこで、その犯しやすい個所を なるべく避けてとおる、 または、計算量を減らす工夫 をするべきである。 そのためには、 次のことを考えなくてはいけない。 (1) 思いつく解法のあらすじを ごく簡単に箇条書きにする。 (2) 上述の解法を用いた際に要する 計算量と時間を見積もる。 (3) 計算量を減らす手だてを考える。 そのためには [a]図を使って計算を省けないか。 [b]置き換えをすることによって、 大変な計算を少しでも楽にできないか。 例えば、 分数、無理数、指数、対数絶対値記号、微分、積分 などにおいて。 (4) 計算をする代わりに、 理論的に議論することで決着がつけられないか。 (5) 場合分けをして、 各場合の計算が楽にならないか。 (6) 対応、対称性、周期性などの規則を捉えて、 体系的に計算することができないか。 (7) 適切な媒介変数を導入し、 計算量を減らせないか。 (8) 公式を間違わないように使うために、 扱っている素材が標準形に直されてあるか。 例えば、接線の方程式や、単振動の合成。 (9) 幾何学的知識に基づき計算量を減らせないか。 例えば、 相似比、正射影、拡大や縮小の比率 を利用する。 (10) 適切な記号や座標を導入し、 計算を減らせないか。 (11) 対称性があるときに、 “同様に”ということばで逃げられないか。 (12) “一般性を失うことなく”という言葉を使うことによって 同様の計算の繰り返しを避けられないか。 |
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(3) | 検算する習慣をつけよう | |||
多くの場合、検算する余裕はない。 だから、答えが怪しいと思うものだけを 検算することが能率的である。 (1) 答えが不自然なものはないか。 すなわち、√5615 などは、めったに出てこない。 出てくる無理数の80%以上は √2か√3である。 (2) 答えが妥当性のあるものか否か。 例えば、sinの値が1.2になったり、 面積が負の値になったり、 確率の値が1を超えたり。 (3) 全ての場合の検算をするのが大変なときは、 特別の場合についてだけでも チェックしておくことが大切である。 |
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X | テーマ別に解法を整理しよう | |||
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数学の問題を解く力と、 授業中(または参考書を読んで)解答を理解する力 とは少し違いがある。 当然、前者は即得点につながるが、 後者は必ずしもそうではない。 何故このような悲劇が生ずるのか、 その原因を考えてみよう。 このようなタイプの生徒はおおむね真面目だが、 応用が効かなかったり、 柔軟性に欠けていたりする。 授業で解説された問題を少し変えて出題されると, その少しの変化についていけなくなる。 すなわち,問題の形式的な少々の変化が, 本質を大きく左右し, 解法を大はばに変えなくてはならないことがある。 だから本質を見抜く力(II)や 柔軟な思考力(V)を 養っておかなければならないのだ。 そのための対策として, テーマ(分野, トビックス,シヤンル)別に 解法を整理しておくのがよい。 例えば“関数と変域が与えられているとき, その最大値,最小値を求めよ” という最大値,最小値問題について考えてみよう。 (1) その関数の変数が1個なのか複数個なのか (2) その関数の次数が 1次なのか,2次なのか,3次なのか, それ以上なのか。 または, 分数関数,3角関数や,対数関数,…… なのか (3) その関数には 何らかの意味で対称性がないか (4)変域が閉区間なのか,開区間なのか。 2変数関数ならば, 変域がxy平面上の円(だ円)周上か, 円(だ円)の内部なのか, それとも長方形か,ひし形か, それ以外の領域なのか 上述の事柄をチェックした後, 10通り以上もある最大値。 最小値問題の解法を決定していくのである。 すなわち,問題文の少々の違い (実は本質的な違いになり得る)を 見逃さないで, 個々の問題の本質にかなった最良の解法を 決定しなければならない。 参考のために 最大値・最小値問題の解法パターンを列挙してみよう。 |
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A | 1変数のとき | |||
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:y=f(x),a≦x≦b (1)f(x)が1次関数のとき,f(a),f(b)の大きい方が最大値 (2)f(x)が2次関数のとき,平方完成 (3)f(x)が3次以上の関数のとき, [a]微分して,増減表を書く [b]変数を置き換えて,次数を減らす工夫をする(合成関数にする) (4)3角関数のとき,単振動の合成や変数変換をする。 (5)相加・相乗平均の関係を利用する。 上述のように変数が一つの関数y=f(x)でさえ, いくつもの解法があり、 与えられた問題の条件の微妙な変化をしっかり見抜き, その問題にはどの解法を用いるかを 判断しなければならないのである。 変数が2個以上ある関数, 例えばz=f(x、y)の最大値・最小値問題 においてもその解法は 5, 6通りもあるのである。 |
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B | 2変数のとき | |||
:z=f(x、y) (1)変数変換する [a]x+y=s、xy=tとおく [b]x=cosθ,y=sinθとおく [c] その他の置き換え (2)変域を表す領域と, z=f(x、y)のzを媒介変数とみなしたときの 直線(または曲線)群が共有点をもつような zの最大値(または最小値)を求める。 (3)2変数xまたはyの一方を固定し(例えばyを固定), xだけの関数とみなし, xを変城内で動かしたときの 最大値(または最小値)を求める。 次にyを変数として含む最大値の中の最大値を, yを変化させることによって求める方法 (4)絶対不等式 (相加・相乗平均の関係や コーシー・シュワルツの不等式etc.) を利用する方法 (5)ベクトルの内積を利用する方法 だから,まずそれらの解法を十分に理解し, その後,どのような点に注意すれば解法が決定できるのか のノウハウをもマスターしなければならない。 一つのテーマで数多くの解法があるのは, 特に次のものがある。 @ 不等式の証明法 A最大値・最小値問題 B軌跡の問題 C立体の体積の問題 Dものの個数を数える問題 E整数問題 F微分方程式の解法 G漸化式から一般項を求める問題 H図形に関する問題 勉強したら、しただけデキルようになるような 学習法を自分の手で確立しなければならない。 そして能率的な学習をし, 将来立派な学力を身につけてほしい。 |
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