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<5/8> 先日、彼女達が心配で柔道の試合を見に行った。実は機会があれば相手チームであるL中の顧問に、「Sさんがよく絞め技を使うようだが、危険だから辞めさせてはどうか」と、意見を言おうと思ったのである。しかしよく考えると、例えば野球の試合で「うちのキャッチャーは肩が弱いので盗塁だけは、無しにしてくれないだろうか」と相手の監督に頼むようなもので、一笑に付されるだけであることに気付いた。それにこちらの弱点を教え、相手に作戦を与えるようなものである。 |
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知り合いの柔道顧問の先生がいたので絞め技の話をすると、確かに男子の試合に比べて、女子の方が、力がないだけに逃げられず絞め落とされる生徒が多いとのことであった。男子の試合を見ていると、興奮した生徒が、「そこだ!よし絞めろ!絞めろ!」と熱い声援を仲間に送っている。好奇心が人一倍強い私も、興味津々で見ていたが、絞め落とすまでには至らなかったようだ。 |
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そのうちに彼女の試合が始まった。私は、探し物をした後、再び試合を見ようと思ったが、もうすでに試合は終わっていた。大外刈りか何かで、1本とられたのだなと思った。少なくとも絞め落とされなかったのでひとまず安心した。もう一人の生徒は、階級別で1位になり県大会への出場が決まった。おとなしく座って静かに勉強している姿しか知らない私にとって、また違った積極的に攻撃する側面を見せてくれた。 |
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数日して彼女に総体の試合のことを聞いた。「先生、私、絞められちゃった。はじめ私がSさんを倒したんです、そうしたら相手がすかさず私を絞めたんです。それで命が危ないと思い、畳を3回叩きました。相手のSさんは試合後、『絞めちゃった』と、みんなに、笑いながら、話していたんですよ」私は、彼女の話を聞いてこれで良かったと思った。一番軽い48kg級に出場したが、体重が40kgあまりしかない小柄な彼女が、相手の絞め技から逃れることはまずできないと思ったからである。そして「先生が絞められたらギブアップしろと言ったから畳を叩いたからね」と、言ってくれた。3年間柔道の練習をしてきて、晴れの舞台はたった30秒ほどで終了した。そして絞められて畳を叩いたのは、女子では初めてかもしれない。個人戦であって良かったとも思った。団体戦ならチームの為にも絶対に畳など叩くわけにはいかないからだ。しかし彼女も私の一言で、絞め落とされる恐怖から開放されたと思うと、やはりこれで良かったと思った。シーンと静まりかえった道場の真中で、一緒に練習してきた仲間や、3年間闘ってきた他校の選手、それに父兄達の好奇なまなざしの中で、審判によって彼女が活を入れられている光景を見ることは、私にとっても、観戦していた母親にとっても、とても絶えられなかったと思う。そしてわかったことは私が柔道の顧問をしたら、強いチームは絶対できないだろうということである。<5/8> |
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